【徹底解説】Nebius Group (NBIS) の株価はどこまで上がる?AIインフラのダークホースを事業・財務・リスクから完全分析

2025年、AI(人工知能)ブームが世界を席巻し、NVIDIAや大手テック企業が市場の主役として脚光を浴びる中、その影で驚異的な成長を遂げている一社の「ダークホース」が存在します。その名は、Nebius Group (NASDAQ: NBIS)。オランダ・アムステルダムに本拠を置く、AIインフラストラクチャに特化したテクノロジー企業です。

同社は2025年9月、IT業界の巨人Microsoftとの間で数十億ドル規模のAIインフラ提供契約を締結したと発表し、その株価はわずか数日で2倍近くに急騰。一躍、ウォール街の注目を浴びる存在となりました。しかし、その華々しいニュースの裏で、Nebius Groupがどのような企業であり、いかなる強みを持ち、そしてどのようなリスクを抱えているのか、その実態はまだ広く知られていません。

本記事では、この謎多きAIインフラ企業、Nebius Groupについて、その複雑な出自から、革新的な事業内容、驚異的な財務状況、そして輝かしい将来性に至るまでを、入手可能な情報を基に徹底的に深掘りします。詳細な分析を通じて、今後の株価を左右するであろう「期待」と「リスク」を多角的に洗い出し、投資対象としてのNebius Groupの価値と、現在の投資タイミングについて深く考察します。

Nebius Groupとは?- 「ロシアのGoogle」から生まれたAIインフラの巨人

Nebius Groupは、2024年に誕生した比較的新しい企業ですが、そのルーツは深く、数十年にわたる技術的蓄積と世界トップクラスの人材を継承しています。その正体を理解するには、まず母体である「Yandex」の歴史を紐解く必要があります。

会社概要

Nebius Groupの設立背景は、近年の地政学的な激動と密接に関連しています。同社は、かつて「ロシアのGoogle」と称されたロシア最大のテクノロジー企業Yandexからスピンオフ(事業分離)して誕生しました。

Yandexは1997年に設立され、ロシア国内で圧倒的なシェアを誇る検索エンジンを中核に、配車サービス、Eコマース、翻訳など多岐にわたる事業を展開していました。法的にはオランダに登記された持株会社Yandex N.V.がNASDAQに上場しており、グローバルなテクノロジー企業としての地位を確立していました(出典: inves note)。しかし、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受け、国際的な制裁の対象となり、NASDAQでの株式取引が停止されるなど、事業環境が激変しました。

この危機に対応するため、Yandex N.V.は大規模な組織再編を決断。2024年7月、ロシア国内の主要事業(検索エンジン、配車サービスなど)をロシアの投資家コンソーシアムに売却し、ロシア国外で展開していた国際事業を分離・独立させました。この残された国際事業を継承し、AIインフラ企業として再出発したのが、現在のNebius Group N.V.です(出典: Wikipedia)

Nebius Groupの基本情報

  • 会社名: Nebius Group N.V.
  • ティッカーシンボル: NBIS (NASDAQ上場)
  • 本社所在地: オランダ、アムステルダム
  • 設立背景: 2024年7月、Yandex N.V.がロシア事業を売却後、残存する国際事業を継承して社名変更。
  • 主要経営陣: Yandexの創業者であり元CEOのArkady Volozh氏が、Nebius GroupのCEOとして経営の舵を取る。
  • 人材: Yandexから引き継いだ1,000人以上のトップエンジニアや経営幹部が中核を構成(出典: inves note)。Yahoo Financeによると、従業員数は約1,371名(2025年9月時点)

この再編により、Nebius Groupは地政学的リスクを切り離し、欧米市場に完全に焦点を当てたグローバル企業として生まれ変わりました。Yandex時代に培われた高度な技術力と優秀な人材という貴重な資産を、AIという最も成長著しい分野に集中投下する戦略を採っています。

ビジネスモデル:垂直統合型のAIインフラストラクチャ

Nebiusの最大の強みであり、競合他社との明確な差別化要因となっているのが、「垂直統合型(Vertically Integrated)」のビジネスモデルです。これは、AIモデルの開発と運用に必要なインフラのあらゆる層(スタック)を自社で設計・開発し、最適化して提供することを意味します。

具体的には、以下の要素を包括的に手掛けています(出典: Nebius公式サイト)

  • ハードウェア: AIの計算処理に最適化されたサーバー、ラック、さらにはデータセンターの設計まで自社で行う。
  • ソフトウェア: 大規模なGPUクラスタを効率的に管理・運用するための独自ソフトウェアや、AI開発を容易にするためのツール群(AI Studioなど)を開発。
  • インフラストラクチャ: ヨーロッパ(フィンランド、パリなど)や米国(ニュージャージー、ミズーリなど)に大規模なデータセンターを自社で建設・運用(出典: Wikipedia)

この垂直統合モデルにより、Nebiusは「ハイパースケーラー(AWS、Azure、GCPなど)の規模と柔軟性」「スーパーコンピュータの圧倒的な性能」を両立させることを目指しています。ハードウェアとソフトウェアを一体で最適化することで、特定のAIワークロードに対して最高のパフォーマンスをコスト効率良く提供できるのです。これは、汎用的なサービスを提供する大手クラウドプロバイダーにはない、AI特化型ならではの強みと言えます。

中核事業:Nebius AIクラウド

この垂直統合モデルの結晶が、中核事業である「Nebius AI Cloud」です。これは、生成AIや大規模言語モデル(LLM)のトレーニング(学習)やインファレンス(推論)といった、極めて計算負荷の高いワークロードのために設計されたフルスタックのクラウドプラットフォームです。

主な特徴は以下の通りです。

  • 最新鋭のGPUへのアクセス: NVIDIAとの強固なパートナーシップにより、NVIDIA H100, H200, さらには次世代のBlackwellアーキテクチャ(GB200など)を含む最新GPUを大規模に配備(出典: Nebius公式サイト)。顧客は単一のGPUから数千単位のGPUクラスタまで、必要に応じてシームレスに拡張できます。
  • 高性能ネットワーキング: 大規模な並列計算に不可欠な高速インターコネクト技術であるInfiniBandを採用し、GPU間の通信ボトルネックを解消。
  • 最適化された開発環境: KubernetesやSlurmといったクラスタ管理ツール、JupyterLabやMLflowなどの開発ツールがプリセットされており、AI開発者がインフラの管理に煩わされることなく、モデル開発に集中できる環境を提供します(出典: Nasdaq)

Nebiusの顧客層は非常に幅広く、AIイノベーションを追求するあらゆる規模の組織を対象としています。公式サイトや事例からは、以下のような顧客企業が確認できます。

  • AIスタートアップ: デザイン向け生成AIモデルを開発するRecraftや、ロボット制御システムを開発するPositronic Roboticsなどが、Nebiusのクラウド上でモデルをトレーニングしています(出典: Nebius Customer Stories)
  • エンタープライズ: ヘルスケア分野では、製薬インテリジェンスプラットフォームを提供するInpharmDが、オンプレミス環境とNebiusクラウドを連携させて計算コストを最適化しています(出典: Avesha Case Study)
  • 研究機関や国家AIプログラム: 膨大な計算資源を必要とする基礎研究や、国家レベルでのAI戦略を推進するプロジェクトにもインフラを提供しています。

多角的な事業ポートフォリオ

Nebius Groupは、中核のAIクラウド事業を補完し、未来のテクノロジーエコシステムを構築するために、複数の子会社や関連会社を傘下に収めています。これにより、単なるインフラ提供者にとどまらない、多角的な成長戦略を描いています。Avride(アヴライド)自動運転技術に特化した開発企業。Yandexの自動運転部門とUberの合弁事業が前身であり、この分野で豊富な経験を有します。乗用車向けの自動運転システム(ロボタクシー)や、ラストマイル配送を担う配達ロボットを開発。すでにUberやGrubhubと提携し、米国の一部都市でサービスを展開しています。最近では、韓国のHyundai Motorとロボタクシー車両の共同開発で提携するなど、事業を拡大しています(出典: Reuters)TripleTen(トリプルテン)テクノロジー分野へのキャリアチェンジを目指す社会人向けのオンライン教育プラットフォーム(EdTech)。ソフトウェアエンジニアリング、データ分析、QAエンジニアリングなどのコースをパートタイムで提供し、実践的なスキル習得を支援します。高い就職率を誇り、米国市場で有力なプレイヤーの一角を占めています(出典: TripleTen公式サイト)Toloka(トロカ)Nebiusが株式を保有する関連会社。AIモデル、特にLLMの学習や評価に不可欠な高品質な教師データを作成・提供するプラットフォームです。世界中の専門家ネットワークを活用し、20以上の専門分野、40以上の言語に対応したデータソリューションを提供。AI開発の精度と安全性を高める上で重要な役割を担っています(出典: Toloka公式サイト)ClickHouse(クリックハウス)こちらも株式を保有する関連会社で、超高速な分析クエリを実現するオープンソースの列指向データベース管理システムを開発しています。ビッグデータ分析の分野で高い評価を得ており、Nebiusのデータ処理基盤を強化する上でシナジーが期待されます。

これらの事業は、AIクラウドという中核事業と相互に連携し、一つの巨大なエコシステムを形成しています。例えば、Avrideの自動運転技術開発にはNebiusのAIクラウドが活用され、TolokaはNebiusの顧客がAIモデルを訓練するためのデータを提供できます。このような多角的なポートフォリオは、Nebius Groupに安定した収益源と未来への多様な成長オプションをもたらしています。

Nebius Groupの将来性に対する市場の熱狂は、単なる期待感だけに基づいているわけではありません。同社の驚異的な成長は、具体的な財務数値と、ゲームの流れを一変させる戦略的な動きによって力強く裏付けられています。

主要財務ハイライト(2025年第2四半期)

2025年8月7日に発表された第2四半期(2025年4月〜6月期)決算は、同社の急成長を鮮明に示しています(出典: Nebius Q2 2025 Financial Results)

  • 驚異的な売上成長: 第2四半期の売上高は1億510万ドルに達し、前年同期比で625%増という爆発的な成長を記録しました。前期比でも106%増と、成長がさらに加速していることが分かります。
  • 強気なARR見通し: この力強いモメンタムを受け、同社は2025年末時点でのARR(Annualized Run-rate Revenue: 年間経常収益)の見通しを、従来の予測から引き上げ、9億ドルから11億ドルとしました。ARRは、直近月の収益を12倍して年換算したもので、SaaSやクラウドビジネスの成長性を示す重要な指標です。
  • 収益性の改善: 中核事業であるAIインフラ事業は、計画を前倒しで調整後EBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)の黒字化を達成しました。これは、事業が健全な収益性を伴ってスケールしていることを示唆します。ただし、後述するデータセンター建設など巨額の設備投資(CapEx)が続いているため、会社全体の純利益は依然として赤字の状態です。
  • 積極的なインフラ投資: AIインフラへの旺盛な需要に応えるため、同社はインフラ拡張を積極的に進めており、2026年末までに1ギガワット(GW)以上の電力を確保する目標を掲げています。これは、巨大なデータセンター群を稼働させるための電力容量であり、事業規模の拡大に向けた強い意志を示しています。

これらの数値は、NebiusがAIインフラ市場の急拡大の波に乗り、主要プレイヤーとしての地位を確立しつつあることを物語っています。クラウドAI市場は年率30%以上の急成長が見込まれており、Nebiusの事業機会は極めて大きい

ゲームチェンジャー:Microsoftとの174億ドル契約

Nebiusの将来性を語る上で、2025年9月8日に発表されたMicrosoftとの契約は、まさに「ゲームチェンジャー」と呼ぶにふさわしい出来事です(出典: Nebius Press Release)

この複数年契約の詳細は以下の通りです。

  • 契約規模: Reutersの報道によると、契約期間は5年間で、総額は174億ドル(約2.6兆円)に上ります。さらに、Microsoftの需要に応じて最大194億ドルまで拡大する可能性があるとされています(出典: Reuters)
  • 契約内容: Nebiusは、米国ニュージャージー州ヴァインランドに建設中の新しいデータセンターから、Microsoftに対して専用のAIインフラストラクチャ容量を提供します。

この契約が持つ戦略的な意義は、単なる売上規模の大きさを遥かに超えています。

  1. 技術力の絶対的な証明: 世界最高峰のテクノロジー企業であり、AI分野で世界をリードするMicrosoftが、自社のAIサービスを支える基盤の一部としてNebiusを選んだという事実は、Nebiusの技術力、信頼性、そして供給能力がワールドクラスであることを何よりも雄弁に物語っています。
  2. 磐石な収益基盤の確立: この契約により、Nebiusは今後数年間にわたって巨額かつ安定した収益が保証されることになります。これにより財務基盤は飛躍的に安定し、さらなる成長投資を積極的に行うことが可能になります。
  3. 最高の「お墨付き」による信用の獲得: この実績は、他のハイパースケーラー(Amazon、Googleなど)や、OpenAIのようなフロンティアAIモデルを開発する大手AIラボにとって、Nebiusが信頼に足る戦略的パートナーであることを示す最高の「お墨付き」となります。計算資源のサプライチェーンを多様化し、リスクを分散させたいと考える大手企業からの、新たな大型契約獲得への道が大きく開かれました。

CEOのArkady Volozh氏も、「これは我々が獲得を目指す大型契約の最初の一つであり、今後さらに続くと信じている」と述べ、この契約がさらなる飛躍への第一歩であるとの自信を示しています。

成長を支える積極的な資金調達

Microsoftとの契約を確実に履行し、AIインフラへの爆発的な需要を捉えるため、Nebiusは間髪入れずに大規模な資金調達に動いています。2025年9月10日、同社は以下の計画を発表しました(出典: Yahoo Finance)

  • 10億ドルの公募増資(株式発行)
  • 20億ドルの転換社債発行

合計30億ドル(約4500億円)に上るこの大規模な資金調達の主な目的は、データセンター建設を中心とした設備投資(CapEx)の加速です。同社は、Microsoftとの契約に関連する設備投資を、契約から得られるキャッシュフローと、契約そのものを担保とした有利な条件での負債調達で賄うとしています(出典: Nebius Financing Update)。今回の追加調達は、それをさらに上回るペースで成長を加速させるための戦略的な一手と見られます。

この動きは、Nebius経営陣が現在の市場機会を「千載一遇のチャンス」と捉え、短期的な利益よりも長期的な市場シェア獲得を優先する、極めてアグレッシブな姿勢を持っていることを示しています。

今後の株価を左右する要因:期待とリスク

Nebius Groupへの投資を検討する上で、その輝かしい未来への期待と、それに伴う無視できないリスクの両面を冷静に評価することが不可欠です。ここでは、今後の株価を動かすであろう主要なドライバーと懸念点を整理します。

期待できる点(成長ドライバー)

【要因1】AIインフラ市場の爆発的拡大

Nebiusが事業を展開するAIインフラ市場は、まさに歴史的な成長期の真っ只中にあります。生成AIの進化、LLMの巨大化に伴い、GPUを中心とした計算資源への需要は指数関数的に増加しています。複数の市場調査レポートが、この巨大な潮流を裏付けています。

  • Grand View Researchの予測では、世界のクラウドAI市場は2024年の872.7億ドルから、2030年には6,476億ドルに達し、年平均成長率(CAGR)は39.7%に上るとされています(出典: Grand View Research)
  • Fortune Business Insightsも同様に、2025年の1,020.9億ドルから2032年には5,892.2億ドルへ、CAGR 28.5%での成長を予測しています(出典: Fortune Business Insights)

Nebiusは、この巨大な成長市場の中心に身を置いており、市場全体の拡大がそのまま同社の追い風となります。需要が供給を大幅に上回る状況が続く限り、同社の成長ポテンシャルは計り知れません。

【要因2】Microsoft契約がもたらす絶大な信頼と事業機会

前述の通り、Microsoftとの契約はNebiusを単なる「その他大勢」のクラウド事業者から、大手テック企業の戦略的パートナーへと一気に昇格させました。この契約がもたらす波及効果は絶大です。

現在、高性能なAIインフラは供給が非常に限られており、AWS、Azure、GCPといった既存のハイパースケーラーや、CoreWeaveのような専門プロバイダーに需要が集中しています。しかし、顧客企業、特に大規模なAI開発を行う企業にとって、特定の数社に計算資源を完全に依存することは大きな事業リスクとなります。このため、サプライチェーンの多様化とリスク分散の観点から、信頼できる新たな供給元を常に探しています。

Microsoftのお墨付きを得たNebiusは、この「第3の選択肢」「信頼できる代替供給元」として、極めて有力な候補となります。今後、他のハイパースケーラーや、Google DeepMind、Meta AI、OpenAIといったフロンティアAIモデル開発企業が、計算資源の安定確保のためにNebiusと大型契約を結ぶ可能性は十分に考えられます。

【要因3】垂直統合モデルによる技術的・コスト的優位性

Nebiusの垂直統合モデルは、長期的な競争優位性の源泉です。ハードウェア(サーバー、ラック、データセンター設計)からソフトウェア(クラスタ管理、開発ツール)、オペレーションまでを自社で一貫して最適化することで、他社には真似のできない価値を提供できる可能性があります(出典: Nasdaq)

  • パフォーマンスの最適化: AIワークロードの特性を深く理解し、ハードウェアとソフトウェアを協調させて設計することで、最高の計算効率(パフォーマンス・パー・ワット、パフォーマンス・パー・ダラー)を実現できます。
  • コスト競争力: 中間マージンを排除し、オペレーションを効率化することで、高いパフォーマンスを競合よりも低いコストで提供できる可能性があります。これは、価格競争が激化した場合の強力な武器となります。
  • 高い利益率の実現: 将来的には、現在無料で提供しているソフトウェア層やマネージドサービスを有料化することで、高マージンな収益源を確立できる可能性があります(出典: MVC Investing Substack)

この技術的優位性は、Nebiusが単なる「GPUの又貸し屋」ではなく、真のテクノロジー企業であることを示しています。

【要因4】NVIDIAとの強固なパートナーシップ

AIインフラの心臓部であるGPU市場で独占的な地位を築くNVIDIAとの関係は、Nebiusの成功を左右する極めて重要な要素です。そして、両社の関係は非常に強固です。

Wikipediaの情報によると、NVIDIAは2024年12月にNebiusの株式0.5%を取得しており、単なるサプライヤーではなく、株主としても名を連ねています(出典: Wikipedia, citing Bloomberg)。この資本関係を含む戦略的パートナーシップにより、Nebiusは以下のような決定的な優位性を享受できます。

  • 最新GPUへの早期アクセス: NVIDIAが発表する最新・最強のGPU(例: Blackwellプラットフォーム)を、競合他社に先駆けて、あるいは少なくとも同時に大量に入手できる可能性が高まります。技術の進化が速いAI分野において、これは顧客を引きつける上で絶大なアドバンテージとなります。
  • 技術協力: 両社のエンジニアが密接に連携し、NVIDIAのGPUアーキテクチャを最大限に活用するためのソフトウェアやドライバーの最適化を共同で行うことができます。

懸念点(投資リスク)

輝かしい成長ストーリーの一方で、Nebiusへの投資には相応のリスクが伴います。投資家はこれらの懸念点を十分に理解しておく必要があります。

【リスク1】熾烈な競争環境

AIインフラ市場は、巨額の利益が見込める一方で、極めて競争の激しい戦場です。

  • 既存の巨人: Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP) といったハイパースケーラーは、圧倒的な資金力と顧客基盤を背景に、AIインフラへの投資を急激に強化しています。彼らは自社でカスタムAIチップを開発するなど、垂直統合の動きも見せており、Nebiusにとって最大の競合相手です。
  • 専門領域の競合: Nebiusと同様に、AI特化型のクラウドプロバイダーとして急成長しているCoreWeaveの存在も無視できません。CoreWeaveもまた、NVIDIAとの強いパートナーシップを持ち、大規模な資金調達を成功させてインフラを急拡大しています。両社は顧客獲得や人材獲得、そして最新GPUの確保において、直接的な競争関係にあります(出典: Nasdaq)

今後、価格競争や顧客獲得競争が激化し、Nebiusの収益性や成長率が圧迫される可能性は常に考慮すべきリスクです。AIインフラ市場ではCoreWeaveなどの強力な競合が存在し、激しい競争が繰り広げられている

【リスク2】巨額な先行投資と収益性の課題

データセンターの建設とGPUの大量購入には、莫大な先行投資(CapEx)が必要です。Nebiusは2025年だけで約20億ドルの設備投資を計画しており、今後もその規模は拡大していくと見られます。このビジネスモデルは、本質的にハイリスクです。

アナリストの中には、「経常収益1ドルを生み出すために、1ドルの設備投資が必要」という経験則を指摘する声もあります(出典: Seeking Alpha)。計画通りに顧客を獲得し、データセンターの高い稼働率を維持できなければ、巨額の減価償却費や、資金調達に伴う金利負担が重くのしかかり、黒字化が遠のくリスクがあります。Microsoftという巨大なアンカー顧客を得たことでこのリスクは大幅に軽減されましたが、事業全体として持続的な収益性を確立できるかは、依然として重要な監視項目です。

【リスク3】株価の過熱感とボラティリティ

Microsoftとの契約発表後、Nebiusの株価は短期間で急騰しました。2025年9月8日の終値約64ドルから、わずか2日後の9月10日には一時100ドルを超えるなど、極めて高いボラティリティ(価格変動性)を示しています。この急騰には、将来の成長に対する大きな期待が既に織り込まれています。

このような状況では、少しでもネガティブなニュース(例えば、四半期決算が市場予想に届かない、競合に大型契約を奪われるなど)が出た場合、株価が大きく調整する(下落する)可能性があります。また、市場全体で「AIバブル」への警戒感が高まる局面では、Nebiusのような高成長・高バリュエーションの銘柄は特に売られやすくなるため、注意が必要です。Microsoftとの契約発表を機に株価は急騰したが、その反動による調整リスクには注意が必要

【リスク4】地政学的ルーツへの潜在的懸念

Nebiusは法的にはオランダに本拠を置き、ロシア事業を完全に売却した欧米企業です。経営陣もグローバルな人材で構成されており、事業運営も欧米市場に完全にフォーカスしています。しかし、その出自がロシア企業Yandexであるという事実は、一部の投資家や顧客にとって、潜在的な懸念材料となる可能性があります。

現時点では事業への直接的な影響は見られませんが、将来的に国際情勢が大きく変化した場合、この地政学的なルーツが何らかの形でネガティブな影響を及ぼす可能性はゼロとは言い切れません。これは、同社特有のリスクとして認識しておくべきでしょう。

結論:Nebius株への投資タイミングは「今」か?

これまでの詳細な分析を踏まえ、Nebius Groupへの投資タイミングについて、投資家のスタイル別に考察します。同社がハイリスク・ハイリターンな成長株であることは間違いなく、自身の投資戦略とリスク許容度に合わせた判断が求められます。

投資スタンス 判断 理由・条件
長期投資
(3年以上)
強気 / 買い推奨 AI革命という数十年続く巨大なパラダイムシフトの中核を担うポテンシャルは計り知れません。Microsoftとの契約は、その長期的な成長ストーリーが単なる夢物語ではないことを裏付ける強力な証拠です。現在の高いバリュエーション(株価評価)は短期的なリスクですが、長期的な視点に立てば、将来の成長ポテンシャルはそれを上回る可能性があります。株価の調整局面で時間分散しながら買い進める(ドルコスト平均法など)戦略が有効と考えられます。
中期投資
(1年〜3年)
条件付きで検討 今後の株価を動かす鍵は、四半期ごとの決算での売上成長率の維持Microsoftに続く新たな大型契約の獲得、そして調整後EBITDAの黒字定着です。これらのポジティブな触媒(カタリスト)が確認できれば、株価はさらに上昇する可能性があります。市場全体の調整などで株価が大きく下落したタイミングがエントリーポイントになり得ますが、高いボラティリティを許容できることが大前提となります。
短期投資
(数日〜数ヶ月)
非推奨 現在の株価は、決算や大型契約といったニュースに極めて大きく左右され、テクニカル分析が機能しにくい局面です。ボラティリティが非常に高く、短期的な値動きの予測はプロの投資家でも困難を極めます。ギャンブル的な要素が強いため、短期的な利益を狙うトレーディングには不向きな銘柄と言えます。

総括として、Nebius Groupは、AIインフラという時代の中心テーマに賭ける、極めて魅力的な成長株です。そのポテンシャルは非常に大きいものの、競争の激化や巨額投資に伴うリスクなど、道のりは決して平坦ではありません。自身の投資期間とリスク許容度を十分に考慮し、短期的な株価の変動に一喜一憂せず、企業の長期的な成長を見守ることができる投資家にとって、ポートフォリオの成長エンジンとなり得る、非常に興味深い投資対象と言えるでしょう。

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