リーマンショック級の株式暴落が再来する可能性を徹底検証
リーマンショック級の株式暴落が再来する可能性
リーマンショック(2008年)以降、世界の金融市場は複数のショックを経験してきました。しかし、その規模に匹敵する株式暴落が再来する可能性については専門家の見解が分かれています。一部の専門家は現在の経済状況からリーマン級の暴落を懸念しています。例えば、世界的投資家のジム・ロジャーズ氏は「2024年以降、リーマンショックを超える経済危機が起きるだろう。私の人生で最大の危機になると思う」と予測しています。また、ヘッジファンド経営者のマーク・スピッツネーゲル氏は、米国経済が1929年の大恐慌以来最大の暴落に直面する可能性を指摘しています。
一方で慎重派のアナリストや機関投資家は、現時点でリーマン級の暴落を予想しないとの見解もあります。例えば、ある資本市場アナリストは「米国株式市場の大暴落は予見できない。むしろ今後も緩やかな成長が続く」と述べています。主要金融機関の多くも、2025年に株式市場が急落するという「ベースケース」(最も確からしいシナリオ)ではないとしています。むしろ10~20%程度の調整局面(コレクション)の可能性は高まっているものの、リーマンショックのような40~50%の急落は確実視されていないのが現状です。
リーマンショック級の暴落が起こるためには、深刻な金融危機や経済危機が発生する必要があります。2008年のサブプライムローン危機は銀行システムの信用不安が世界的に広がり、株式市場を暴落させました。現在の市場環境は、2008年当時とはいくつか異なる点があります。まず、金融機関の健全性はリーマン事件後の規制強化により改善しており、サブプライムローン危機のような「バブル崩壊→金融機関破綻」というチェーンが直ちに起こる懸念は低いと見られています。また、インフレ対応のため中央銀行が金利を引き上げ始めたことでマネーサプライの過剰供給による投機バブルは収束傾向にあります。さらに、米国を中心に景気は堅調さを保っており、失業率も低水準にあることから、リーマンショック当時のような景気後退局面には入っていないとの見方もあります。
もっとも、リスク要因として挙げられるのはインフレと金利の動向、そして地政学的リスクです。米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ抑制のため引き続き高金利政策を維持しており、これにより企業の資金調達コストが上昇し、経済減速や企業業績悪化のリスクが高まっています。また、地政学リスクとしてはロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰や、中米関係の緊張、そして今後の米国大統領選挙による政策不確実性などが指摘されています。これらの要因が重なると、市場の不安が高まり投資家のリスク回避ムードが強まる可能性があります。
専門家の中には、「2025年に株式市場が暴落する可能性は、むしろ短期的な調整リスクの高まりと言える」と指摘する声もあります。つまり、大幅な下落(例えば30%以上)そのものは必ずしも予測されていないものの、市場が高値圏にある中で何らかのトリガーがあれば一時的に急落するリスクは無視できないという見方です。実際、2022年にはインフレ懸念と金利引き上げによりS&P500指数が約20%下落する局面がありましたが、これは調整局面に留まりリーマン級の崩壊には至りませんでした。その後、2023年以降はテクノロジー株を中心に市場は回復基調でしたが、高値圏での変動性(ボラティリティ)が高まっている点は注意が必要です。
総じて、リーマンショック級の株式暴落が再来する可能性については「確実とは言えないがゼロではない」という慎重な見解が多いようです。専門家の予測は人それぞれですが、多くは現状の経済指標や金融政策を踏まえ、リーマンショック時のような信用危機が直近に起きるとは考えていないものの、リスク要因を警戒すべきだと述べています。投資家としては、「あっても困らない」という前提で暴落リスクに備えることが肝要でしょう。
ウォーレン・バフェットの現在の現金保有率とその理由
投資界の巨匠ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイは、近年歴史的な高水準の現金を保有しています。最新の決算によれば、バークシャーの現金および現金同等物(主に米国短期国債)の残高は3,400億ドル超(約50兆円)に達しており、同社の総資産に占める割合は約25~30%にも上ります。これはバフェット氏の投資運用の中でも極めて高い現金保有率であり、過去の市場バブル期に匹敵する異例の水準です。
バフェット氏がこれほど巨額の現金を積み上げている理由は主に二つあります。第一に、魅力的な投資先が見当たらないことです。バフェット氏は割安な優良企業を発掘して買い増すバリュー投資家ですが、近年の株式市場は全体として高値圏にあり、「安いお得な株」が少ないとの判断を下しています。実際、バークシャーは直近の四半期で11四半期連続で株式の売り越し(売却超過)を続けており、新たな大型の株式買い付けや事業買収(M&;A)を控えています。買いたい銘柄がない以上、現金や国債に資金を留保するのは自然な選択です。
第二に、将来の市場混乱時に備えて流動性(現金)を確保していることです。バフェット氏は「現金は戦略的な資産」と位置づけており、不況や市場暴落が訪れた際に他の投資家が資金繰りに窮する中で、自分たちだけが大胆に買い進められるようにしています。これは彼の投資哲学の一環で、「皆が恐れている時に欲張りになれ」という彼の名言が示す通りです。実際、リーマンショック時にもバフェット氏は多額の現金を抱えており、市場低迷期にゴールドマン・サックスやジェネラル・エレクトリックなどに資金援助(優先株投資)を行い、後に巨額の利益を上げました。現在の現金残高の内訳は、以下の図で示されるように、約88%が米短期債で構成されています。
このように、バフェット氏は「暴落が起きても買えるだけの現金を持っておく」ことで、他の投資家にはできない好機を捉える準備をしているのです。
さらに、バフェット氏自身が語る現金保有の理由として「資本保全(損失回避)」があります。彼は「第1ルール、損しないこと。第2ルール、第1ルールを忘れるな」という著名な言葉で投資の原点を示しています。つまり、市場が不透明なときに勝手に現金を投じて損失を出すより、まずは資金を安全に保つことが大切だという考えです。バークシャー・ハサウェイは保険事業を軸にしており、そこから生まれるフロート(将来の保険金支払いまでの預り金)を原資に投資を行ってきました。この仕組みによりバフェット氏は「ゼロコストの長期資金」を調達できるため、現金をため込んでいても資金コストがかからず、逆に市場が暴落した際に他社が資金繰りに苦しむ中で自分たちは買い進められるという強みがあります。
バフェット氏の現金保有額の推移は、過去の市場環境との関連でも興味深いものがあります。以下のグラフが示すように、バークシャーの現金保有高は2008年のリーマンショック前後や2020年のコロナショック前後にも高まっており、市場の混乱期に先立って現金を積み上げる傾向が見られます。
例えば1998年(LTCM危機前年)には現金残高が総資産の約23%に達し、2008年第2四半期末時点でも約312億ドルの現金を保有していました。バフェット氏はこうした時期に「買うべき良い投資先がない」と判断し、現金ポジションを増やしています。その後、市場が暴落すると巨額の現金を武器に割安株を次々と買い取り、大きな利益を上げてきたのです。このことから、バフェット氏の現金保有率が高まっている背景には、単に「買う株がない」というだけでなく、「いざという時に買えるようにしておく」という戦略的な意図があると言えます。
もっとも、バフェット氏自身も「現金は危険だ」と警告しています。彼は「通貨の価値は長期的には下がり続ける」と述べており、現金だけを長期保有することはインフレによる購買力低下というリスクがあると指摘しています。したがって、バフェット氏の巨額の現金保有は一時的な戦略であって、「現金至上」を唱えているわけではありません。いつかは現金を使って優れたビジネスへの所有権を得ることが彼の目的であり、その準備として今のうちに現金を溜め込んでいると理解できます。バフェット氏は「バークシャーは良いビジネスへの所有権を現金より優先する」とも述べており、市場が下がって割安な機会が訪れればすぐに現金を動かす用意ができている状態なのです。
ウォーレン・バフェットの投資哲学と著名な名言
ウォーレン・バフェット氏の投資哲学は、単純ながら深い洞察力を含む多くの名言に表れています。彼の言葉は投資家だけでなくビジネスマンや一般の人々にも大きなインスピレーションを与えており、何度も引用されています。ここでは、バフェット氏の代表的な投資哲学とその背景にある考えを紹介します。
- 「第1ルール、損しないこと。第2ルール、第1ルールを忘れるな。」 – バフェット氏のこの言葉は投資の鉄則として知られています。要するに「まずは損失を避けること」が最重要だということです。彼は資本保全(損失回避)を最優先し、無謀な投資をしないことを強調しています。この哲学に基づき、バフェット氏は不透明な市場では現金をため込み、勝算のない投資には手を出さない姿勢を貫いてきました。
- 「皆が欲張りなときは恐れ、皆が恐れている時は欲張りになれ。」 – この名言はバフェット氏の逆張り投資の姿勢を象徴しています。市場が過熱気味で投資家が誰もが株を買い占めている時には慎重になり、逆に市場が暴落してみんなが株を売り逃げている時には大胆に買い込むという考えです。彼は人々の心理に振り回されるのではなく、自分の頭で冷静に判断することが重要だと述べています。この態度により、バフェット氏はリーマンショック時など市場低迷期に多くの好機を捉えてきました。
- 「株式投資の極意とは、いい銘柄を見つけて、いいタイミングで買い、いい会社である限りそれを持ち続けること。これに尽きます。」 – この言葉はバフェット氏の長期投資哲学を端的に表しています。つまり、優良な企業を見極めて割安な時期に買い、その企業が優良である限り長期間保有し続けることが投資成功の秘訣だということです。彼は「10年保有したくない株は10分も持つべきでない」とも言い、短期的な株価変動よりも企業の本質的価値と将来性に注目するよう提唱しています。このような長期視点により、バフェット氏はコカ・コーラやアップルなどの優良企業株を長年保有し、大きな利益を上げています。
- 「投資の成功は、あなたが何を知っているかではなく、あなたが何を知らないと認められるかにかかっています。」 – バフェット氏は自分の知識や理解の範囲(コンピタンスの境界)を明確にし、それを超える投資には手を出さないことを重視しています。専門外の分野や仕組みの分からない金融商品に無謀に投資するより、自分がよく理解できる事業に投資することでリスクを減らせると考えています。この言葉は「知らぬが仏」ではなく、「知らないと率直に認めて踏み込まない」ことの大切さを示しています。
- 「あなたが行う投資の数を減らせば減らすほど、あなたの投資結果は良くなるでしょう。」 – バフェット氏は少数精鋭の集中投資を推奨しています。彼は「投資の成績を上げるには、良い機会が来た時に大きく賭けることが重要だ」と述べており、何でもかんでも買う分散投資より、見極めた銘柄に重宝を投じる方が結果的に勝率が上がると考えています。この考えは、有名な「パンチカード理論」にも表れています。すなわち、人生に10回しか投資できないと考えれば、どんなに慎重かつ選別的に投資を行うことになるかという話です。バフェット氏自身、長年にわたりポートフォリオを構成する主要銘柄数を限られた数に抑えており、その集中投資によって高いリターンを達成してきました。
この他にも、バフェット氏の名言は数多くあります。例えば「市場は投票機ではなく体重計である」という言葉は、短期的な株価は投資家の心理に左右される投票機のようだが、長期的には企業の実力(体重計のような客観的価値)に回帰するという彼の信念を示しています。また「予想よりも準備すること」という言葉は、将来の不測の事態に備える重要性を強調しています。これらの名言からも分かるように、バフェット氏の投資哲学の核心は「理性と節度」にあります。感情的な行動を避け、長期的視野で堅実に資産を増やすこと、そして何より損失を防ぐことが重要だという一貫した考え方なのです。
主要株価指数の長期的な推移(リーマンショック前後を含む)
リーマンショック前後の世界の株式市場は劇的な変動を見せました。特に米国の主要株価指数であるS&;P500指数の推移は、バブル崩壊とその後の回復過程を物語っています。S&P500指数は2007年10月に約1,565ポイントと当時の歴史的高値を記録しましたが、その後リーマン・ブラザーズ破綻(2008年9月)を契機に急落に転じます。2008年一年間でS&P500指数は約38%も下落し、同年末時点では年初時より大幅に低い水準(約903ポイント)に沈みました。その後も下落は続き、2009年3月には約676ポイントまで底入れしました。これは2007年のピーク時から約57%もの暴落となり、第二次大戦後でも類を見ない深刻な株式市場の崩壊でした。
しかし、その後の市場は各国政府・中央銀行の景気刺激策の効果もあり急速に回復に転じます。S&P500指数は2009年に約23%上昇し、2013年にはリーマンショック前のピーク水準を回復しました。以降、低金利政策の下で米国株式市場は長期上昇局面(バルマーケット)を迎え、2020年にはコロナ禍を経ても政府支援策でV字回復し、2021年末にはS&;P500指数が4,766ポイントという史上最高値を記録しました。このように、リーマンショック以降約13年でS&P500指数はピークからピークへと大きく上昇し、投資家にとっては大きなリターンをもたらしました。
もっとも、その上昇トレンドの中でもいくつかの調整局面がありました。例えば2015~2016年には中国経済減速懸念で株価が一時下落し、2018年末にはFRBの金融引き締め懸念でS&P500指数が約20%調整しました。また2020年3月には新型コロナウイルス感染拡大により市場が急落し、S&P500指数は約34%もの短期下落を見せました。しかしこれらはいずれも各国の緩和策によって急速に底入れし、その後上昇基調を取り戻しています。リーマンショック時のような金融システムの信用危機が伴わない限り、市場の調整は比較的短期間で収束する傾向があることがわかります。
長期的な視点で見れば、主要株価指数はリーマンショックの谷から大きく回復し、その後も緩やかな上昇基調を維持してきました。S&P500指数はリーマン崩壊前のピーク(2007年)から約15年後の2022年時点で、ピーク時よりも2倍以上の水準に達しています(配当再投資を含めればさらに高いリターン)。これは企業の収益成長や低金利環境によるものですが、一方で市場全体のバリュエーション(株価評価水準)も高水準にあることを示しています。実際、S&P500指数の予想PER(株価収益率)は2023年時点で過去平均を上回る20倍前後と高く、投資家は将来の成長を織り込んだ形で株式を買い支えています。
もっとも、長期トレンドの中に短期的な変動は常に存在します。投資家はリーマンショックを経験することで「株式市場は急落する可能性がある」ことを痛感しましたが、その後の歴史も示すように市場は調整→回復を繰り返しながら長期的には上昇基調にあります。重要なのは、暴落局面に直面した際にパニックに陥らず戦略的に対処することです。次章では、現在の経済状況と専門家の見解を踏まえ、投資家が暴落に備えるための具体的な戦略を考察します。
現在の経済状況(金利、インフレ、地政学的リスク)と専門家の見解
現在の世界経済は、リーマンショック以来となる高インフレと金融引き締め局面を迎えています。2022年以降、米国や欧州ではインフレ率が急上昇し、中央銀行は金融緩和政策から転換して金利引き上げに踏み切りました。米FRBは2022年から2023年にかけて政策金利を0%台から5%台まで引き上げ、市場金利も大きく上昇しました。この結果、企業の資金調達コストが高まり、住宅ローン金利も上昇して消費や設備投資の減速要因となっています。高金利は株式市場にとって不利材料であり、将来の企業収益を現在価値に割り引く際の割引率が上がることで株価評価水準が押し下げられる傾向があります。
インフレ率については、2022年頃には米国で年率9%近くに達しましたが、その後エネルギー価格の調整や供給網の改善により徐々に低下傾向にあります。2023年後半時点で米国のインフレ率は4~5%程度まで下がり、欧州でもピークを過ぎています。しかし依然として中央銀行の目標である2%には届いておらず、インフレ再燃のリスクも残っています。専門家の間では「インフレは落ち着いたか」という論争があります。一部の経済学者は、労働市場の逼迫や賃上げ圧力が根強く、インフレ率が一時低下してもまた上昇に転じる可能性があると警告しています。一方で、需要減退によりインフレは持続的に低下し、2024年までに目標水準に近づくとの楽観論もあります。FRB自身も慎重な姿勢を崩しておらず、「必要ならばさらなる利上げも辞さない」というハードラインを維持しています。
地政学的リスクも無視できません。2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻は現在も続いており、欧州におけるエネルギー危機や世界的な食料価格の高騰を招きました。この地政学リスクは市場の不安定要因となっており、突発的な事態(例えば紛争の拡大や新たな制裁措置)があれば原油価格が急騰し、株式市場に衝撃を与える可能性があります。また、中米関係の緊張も続いており、技術制裁や貿易摩擦が再燃すればグローバルサプライチェーンに影響を及ぼし、企業収益や市場心理に打撃を与える懸念があります。さらに、2024年には米国大統領選挙が控えており、政権交代による経済政策の転換(例えば税制改正や規制強化・緩和)も不確実性として存在します。こうした地政学的リスクは予測困難ですが、市場のボラティリティを高める潜在要因となっています。
こうした現在の経済状況を踏まえ、専門家の見解は様々です。一部のベア派(弱気派)アナリストは、高金利と地政学リスクが重なる中で2024~2025年に米国景気が後退し、株式市場も大幅下落に直面する可能性を示唆しています。彼らは「インフレ収束に成功したとはいえ、金融引き締めの遅れ効果で経済が冷え込み、企業収益が悪化すれば株価は大きく下がる」と警鐘を鳴らしています。また、リーマンショックで有名な予測をした経済学者ノリエル・ルビーニ氏は「スタグフレーション(停滞とインフレの併存)リスクが高まっており、硬直的な高金利が続けば金融システムに新たな脆弱性が生じる」と述べています。
一方、バル派(強気派)の見方もあります。例えば一部のマクロ経済学者や投資家は、「インフレはコントロールできつつあり、景気後退は浅く短期的だろう」と予想しています。彼らは米国経済の底堅さ(雇用の堅調さや個人消費の持ち直し)を指摘し、株式市場も企業収益の成長に支えられて緩やかな上昇基調を維持するとの見通しを示しています。また、テクノロジー分野におけるAI(人工知能)ブームなど新たな成長産業の台頭も、市場全体の底堅さを支える要素として挙げられています。実際、2023年にはAI関連銘柄を中心にテック株が急騰し、S&;P500指数の上昇を牽引しました。こうした動きから、「市場は一部の高成長株に依存しているが、それでも総じて強気相場が続く」との楽観論も根強いのです。
総合すると、現在の経済状況は不透明さと明るさが混在しています。金利上昇とインフレ懸念がリスク要因である一方、景気の底堅さや新産業の台頭がプラス要因です。専門家の見解も割れており、楽観と悲観の両面があります。このような中で投資家が何をすべきか。次章では、リーマンショック級の暴落リスクに備えつつ、長期的な資産運用を成功させるための戦略を具体的に考えてみます。
投資家が暴落に備えるための戦略
リーマンショック級の株式暴落が再来する可能性がゼロではない以上、投資家はあらかじめ備えをしておくことが重要です。ただし、暴落そのものを正確に予測するのは極めて困難です。専門家でさえ意見が分かれるように、市場は未来を保証してくれません。そこで重要なのは、「暴落が起きてもポートフォリオが壊滅しないように準備しておく」ことです。以下に、投資家が暴落に備えるための具体的な戦略をいくつか挙げます。
- 適切な資産配分(アセットアロケーション)を行う: 株式だけに資産を集中させるのではなく、債券や現金、不動産、貴金属など様々な資産クラスに分散させることが大切です。特に暴落リスクが高まる局面では、安全性の高い資産(例えば国債や現金、金など)の比率を高めておくことで、株式暴落時の損失を緩和できます。逆に言えば、市場が安定しているときにはリスク資産(株式など)の比率を上げてリターンを狙いつつ、暴落が見込まれるときには防御姿勢に切り替える柔軟性が求められます。ただし、マーケットタイミングを完全に捉えるのは難しいため、自分のリスク許容度に応じた適切な資産配分を維持し続けることが基本となります。
- 十分な現金や流動性資産を保有する: バフェット氏の戦略に倣い、投資家自身もある程度の現金や流動性の高い資産を手元に残しておくことが望ましいでしょう。暴落局面では多くの投資家が現金需要を高めるため、市場の流動性が不足する恐れがあります。その際、自分にも現金があれば必要に応じて買い戻しや資金繰りに使えますし、逆に他の投資家が資産を売らざるを得ない中で割安株を買い取る機会にも乗れます。ただし、現金保有はインフレによる購買力低下のリスクも伴うため、過度に現金だけにするのではなく短期国債や安全性の高い債券など利回りのある形で保有するのが賢明です。バフェット氏自身も現金の多くを米国短期国債で運用しており、「3か月物と6か月物のどちらを買うかが唯一の問題だ」と述べています。このように、暴落に備えた現金ポジションは必要だが、それを無駄に寝かせない工夫も大切です。
- ポートフォリオの定期的な見直しとリバランスを行う: 市場環境の変化に応じて、自分のポートフォリオの内訳を見直し、必要に応じて再調整(リバランス)することが重要です。例えば、株式市場が長期上昇していてポートフォリオ中の株式比率が当初の計画より高くなっている場合、利食いをして債券や現金の比率を戻すことで暴落時のリスクを軽減できます。逆に、市場が下落して株式比率が下がりすぎた場合には、割安感の出た株式を買い増して元の配分に戻すことで、ローコストで買い増しする効果が得られます。リバランスは「高値で売って安値で買う」という逆張り行動につながり、結果的にパフォーマンス向上に寄与します。ただし頻繁すぎる売買は手数料負担や税金の問題があるため、年1回程度の定期リバランスを心掛けると良いでしょう。
- 優良銘柄にフォーカスし長期保有する: 暴落時には質の悪い銘柄ほど値崩れする傾向があります。そこで平時から財務体質が健全で収益力の高い優良企業に投資し、それらを長期間保有する戦略が有効です。優良企業の株式は一時的な下落は免れませんが、景気回復局面では素早く元の水準に戻り、その後さらに上昇する傾向があります。バフェット氏も「いい会社である限り持ち続けること」を重視しており、実際に彼はコカ・コーラやアップルなど優良企業を長年保有し続けてきました。長期視点で投資すれば短期的な暴落の影響を相殺できる可能性が高く、パニックで売らずに済む心理的安定感にもつながります。もっとも、優良企業であっても市場全体の暴落では大きく値が下がるため、その際に追加買い付けのチャンスと捉えることもできます。優良銘柄にフォーカスすることで、暴落時にも「この会社は本質的に価値があるから落ち着いて持ち続けよう」という根拠が得られ、勝手に売らずに済むでしょう。
- ヒストリカルビュー(過去の教訓)を胸に入れる: リーマンショックやその他の市場暴落の教訓を学ぶことも大切です。過去のデータを見ると、市場は必ず回復するものの、その過程で投資家の心理は恐怖と希望を行き来します。暴落時には「もう底はない」と感じるかもしれませんが、過去にも何度も同じことが繰り返されています。例えば1987年のブラックマンデー、2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックなど、その都度市場は一時的に大混乱に陥りましたが、その後いずれも底入れして新たな高値を記録しています。こうしたヒストリカルビューを持つことで、暴落局面でもパニックに陥らず長期的視野を保つことができます。また、過去の失敗談を学ぶことで「次はこうしよう」という工夫も生まれます。例えば、リーマンショックで多くの投資家がマーケットリンク型商品(MLP)やレバレッジ型商品に手を出して大損をした教訓から、「自分の理解できない金融商品には手を出さない」という原則を持つ人もいます。過去の成功体験・失敗体験を振り返り、自分の投資哲学を磨いていくことが大切です。
- 専門家の助言や情報を活用する: 個人投資家であっても、信頼できる専門家の意見や情報を参考にすることは有益です。例えば、証券会社のアナリストレポートや金融ニュース、投資系の書籍・セミナーなどを通じて、最新の市場動向や専門家の見解を把握しましょう。ただし、専門家の意見も様々であり、常に正しいとは限らない点に注意が必要です。重要なのは自分で情報を分析し、自分なりの判断を下すことです。専門家の助言はあくまで参考資料として受け止め、自分の投資計画に組み込むかどうかは自分で決める姿勢が大切です。また、複数の情報源から意見を聞くことで偏りを防ぎ、より客観的な視点を持つことができます。
以上のような戦略を組み合わせることで、暴落リスクに備えつつ長期的な投資成功を目指すことができます。要は、「あらゆるシナリオに備える」という心構えが大切です。暴落が起きてもポートフォリオが壊滅しないように資産配分を工夫し、暴落が起きなくても資産を着実に増やせるように優良資産に投資する。そして、市場の動きに振り回されないための心理的準備と知識の蓄積も怠らない。これらを実践すれば、リーマンショック級の暴落が再来したとしても乗り切り、その後の回復局面で利益を上げることが可能でしょう。
おわりに
リーマンショック級の株式暴落が再来する可能性について、現在の経済状況や専門家の見解、そして投資家の戦略を総合的に考察してきました。結論から言えば、リーマンショック時のような劇的な暴落が直近に起きると確信できる根拠はありませんが、完全にゼロではないリスクとして常に念頭に置く必要があります。市場は不透明で予測困難なものであり、過去の歴史から学ぶ以上「二度と起こらない」と決めつけるのは危険です。
重要なのは、暴落リスクに備えることです。ウォーレン・バフェット氏のように「皆が恐れる時に買えるだけの現金を持っておく」姿勢や、「損しないこと」を最優先する投資哲学は、個人投資家にとっても示唆に富みます。現金ポジションを適切に保ち、優良資産にフォーカスし、資産配分を工夫分の再調整を怠らない。そして、市場の変動に振り回されないための知識と心理的強さを養うことで、暴落という試練にも耐え抜くことができるでしょう。
最後に、投資は長距離のレースです。一時的な暴落に怯えて無謀な行動を取るより、自分の投資計画を信じて堅持することが大切です。リーマンショックを経験した投資家の多くは「大暴落の時こそ見えてくる」と語っています。それは、割安株を買えるチャンスであり、また自分の投資哲学を再確認する機会だったということです。もしも将来リーマン級の暴落が訪れたとしても、慌てずに備えた戦略を実行し、その後の回復局面で報われることを願っています。
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