リーマンショック級のバブル来臨時にも価値が上がる資産とは? インフレ対策含め詳細解説
背景:
リーマンショック級のバブルとは?背景と原因の詳細
リーマンショックとは、2008年9月に米投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻したことを契機に発生した世界的な金融危機です。この破綻劇は負債総額約6000億ドル(約64兆円)というアメリカ合衆国の歴史上最大の企業倒産であり、世界連鎖的な信用収縮による金融危機を招くことに繋がりました。日本でも、企業の資金繰りが逼迫し、実体経済への悪影響が顕在化しました。
そもそも、リーマンショックの背景には米国における住宅バブルがありました。米国では2000年代前半、低金利政策によって住宅需要が高まり、住宅価格が急騰しました。この不動産バブルの下で、住宅ローン債権(MBS)が金融商品として証券化され、銀行や投資家が大量に購入しました。さらにそのMBSを組み合わせた複雑な証券化商品(CDOなど)も生まれ、世界中の金融機関がこれらに投資していました。このバブルの形成と崩壊の過程は、以下の図で視覚的に理解できます。
しかし2007年に不動産価格の上昇が止まり、景気に陰りが出始めると、住宅ローンを借りた人々が債務を返済できない例が多数発生しました。不動産価格は上昇から下落に転じ、住宅ローンを担保とする証券化商品の価値も急落しました。これにより、銀行や投資ファンドは巨額の損失を被り、信用取引が麻痺しました。2008年9月のリーマン・ブラザーズの破綻はその象徴であり、世界的な金融危機へと発展しました。
この金融危機では、株式市場が世界的に大暴落し、社債・貸出・証券化商品など各金融市場の機能が著しく低下しました。その結果、企業は資金調達が困難になり、設備投資や雇用を削減せざるを得なくなりました。日本でも輸出が激減し、企業収益が悪化して大量の失業が発生するなど、実体経済への打撃が甚大でした。リーマンショックは、金融面と実体経済面の両方で世界経済を混乱させた「リーマンショック級」のバブル崩壊と言えるでしょう。
バブル崩壊時に価値が上がる資産の特徴
バブル崩壊期には多くの資産価格が下落しますが、中にはそれでも価値が上がる資産が存在します。そのような資産には共通する特徴があります。
- 現物資産(Real Asset)であること: 土地・建物や金など、実物の形で存在する資産は、紙の資産(株式や債券など)に比べてバブル崩壊時に価値がゼロになるリスクが低いです。現物資産はそれ自体に価値があり、市場が混乱しても完全に価値が失われにくいためです。例えば金は「有事の金」と呼ばれ、世界中どこでも価値が通じるため、バブル崩壊時に資金が避難する傾向があります。
- 安全資産(セーフヘブン)であること: バブル崩壊時には投資家はリスクを避けて安全資産に逃げ込みます。その代表が主要国の通貨(米ドルや円)や国債です。これらは信用力が高く、価格が安定しているため、市場の混乱期には需要が高まり価値が上がる傾向があります。例えばリーマンショック時には円高が進行し、ドル建て資産を円に替える動きが強まりました。また米国債など先進国の国債も買い手が増え、金利低下(価格上昇)を見せました。
- インフレヘッジ効果があること: バブル崩壊直後はデフレ圧力が強まる場合がありますが、その後の経済刺激策によってインフレが発生する可能性もあります。インフレ時に価値が維持・上昇しやすい資産として、不動産やコモディティ(原油や農産物)、金などが挙げられます。不動産は物件価格や家賃が物価上昇に連動して上がる傾向があり、金や原油もインフレ時には価格が上昇する傾向があります。つまり、インフレ対策になる資産はバブル崩壊後のインフレ局面でも価値を守れるという利点があります。
- 分散投資によるリスク低減: バブル崩壊時に価値が上がる資産は一つではなく複数あります。それぞれの資産は市場状況によって動きが異なるため、複数の資産に分散投資することでポートフォリオ全体のリスクを低減できます。例えば株式市場が暴落する局面でも、金や国債は上昇する場合があります。そのため、株式と金や債券を組み合わせておけば、株式の損失を他の資産の上昇で相殺し、資産全体の下落を抑えられる可能性があります。
以上のような特徴を持つ資産に投資しておくことで、バブル崩壊時にも資産価値を守り、場合によっては増やすことが期待できます。次章では具体的にどのような資産が該当するか、詳しく見ていきましょう。
リーマンショック級のバブル時に価値が上がる資産8選
バブル崩壊時にも価値が上がりやすい資産として、代表的なものを8つ紹介します。それぞれの資産の特徴やバブル時の動きについて詳しく解説します。
1. 不動産(現物資産としての安定性)
不動産はバブル崩壊時にも比較的価値が維持されやすい資産です。土地や建物などの現物資産は、それ自体に使用価値や担保価値があるため、株式のように価格が急落しても完全に価値が失われることはありません。リーマンショック時にも、日本の不動産価格は下落しましたが、その下落幅は株式市場ほど極端ではありませんでした。
また、不動産投資には家賃収入という安定したインカム(収入)がある点も強みです。バブル崩壊によって経済が停滞しても、人々は住む場所が必要なため賃貸需要はある程度保たれます。そのため、家賃収入によるキャッシュフローが得られ、資産全体の価値を支えてくれます。さらに、不動産はインフレ時にも価格が上昇する傾向があります。インフレが進めば建築資材費や人件費が上がり、新規供給が減ることで既存物件の価格が押し上げられるからです。実際、数ある投資の中でも不動産投資はインフレ対策におすすめといわれています。
ただし不動産投資にも注意点はあります。バブル崩壊直後は景気後退で空室率が上がり、家賃相場が下落する可能性があります。また不動産は売買に手間と費用がかかり、流動性(すぐに現金化できる度合い)が低いです。そのため、バブル崩壊時に急に資金を得たい場合には不動産は適しません。しかし長期的に見れば、不動産は資産価値を守りながらインフレにも強い投資先と言えるでしょう。
2. 金(有事のセーフヘブン資産)
金は昔から「有事の資産」として重宝されてきました。バブル崩壊や金融危機が起きると、投資家は不安を抱いて金に資金を移す傾向があります。金は国家の信用に頼らない実物資産であり、世界中どこでも価値が通じるためです。実際、リーマンショック時にも金の価格は一時下落しましたが、各国政府が巨額の金融緩和策を打ち出した後は上昇に転じ、2011年には史上最高値を更新しました。これはインフレ懸念や紙幣への信頼低下から、金への資金流入が増えたためです。
金はインフレ対策にも優れた資産です。紙幣は発行量が増えると価値が下がりますが、金は採掘量に限りがあるため長期的に価値を維持しやすいです。物価が上昇する局面では、「お金よりもモノ」に資金が流れる傾向があり、金の価格もそれに伴って上昇しやすくなります。実際、金はインフレ時にも価格が上がる傾向がある投資方法とされています。また、国際情勢が不安定になると金に資金が逃げ込むため、地政学リスク(戦争や紛争)が高まる局面でも価格が上昇することがあります。
金への投資方法は、金塊や金貨を直接購入する方法の他、金ETF(上場投資信託)や金証といった形で間接的に投資する方法があります。直接購入すれば実物を手元に持て安心感がありますが、保管や売却の手間がかかります。一方、金ETFなどを利用すれば少額から購入でき、証券口座で売買できる利便性があります。いずれにせよ、バブル崩壊時の避難資産として金をポートフォリオの一部に組み入れておくことは有効でしょう。
3. 主要通貨(円やドルなど)
主要国の通貨、特に日本円や米ドルは、バブル崩壊時のセーフヘブン(安全資産)として機能します。リスク回避の動きが強まると、投資家はリスクの高い資産を売却して現金や安全な通貨に資金を移すため、それら通貨の価値(為替レート)が上昇します。
例えばリーマンショック時には、海外で稼いだ利益を円に換金する動きや、ドル建て借入を円建てに切り替える動きが生じ、円高が急速に進行しました。2008年には円相場が1ドル=90円台前半まで急騰し、一時は1ドル=79円台まで円高になる場面もありました。これは世界的な信用収縮の中で、相対的に信用力の高い日本円に資金が集まった結果です。また米ドルも、米国債への資金流入などを背景に安全資産として買われる傾向があります。特に欧州債務危機(2010年前後)の際には、ドル高・円高という形で両通貨がセーフヘブンとして買われました。
主要通貨を資産として保有する方法としては、外貨預金や外貨建て投資信託、FX(外国為替証拠金取引)などがあります。ただしFXなど短期的な為替取引はリスクが高く、一般投資家には適していません。安全資産として保有するなら、外貨預金や外貨建て国債ファンドに少額ずつ投資しておく方法が考えられます。例えば、ドル建ての米国債ファンドを保有しておけば、ドル高局面では為替差益も得られる上、米国債自体の安全性も活かせます。
ただし通貨自体はインフレに弱い資産でもあります。金利がゼロ近くの場合、物価上昇率を上回る利回りが得られないため、長期的には購買力が低下します。そのため、現金や預金の比率は必要最小限に抑え、バブル崩壊時には一時的に現金化してもすぐに他の資産に再投資する戦略が重要です。
4. 株式(質の高い企業に着目した逆張り投資)
バブル崩壊時には株式市場は大暴落しますが、その中でも質の高い企業の株式は長期的に見て価値が上がる可能性があります。株式全体で見ればバブル崩壊時には値下がりが避けられませんが、優良企業の株式は暴落後に業績回復や株価の反発が期待できるためです。
ウォーレン・バフェットの名言に「他人が恐怖に駆られる時こそ貪欲になれ」というものがあります。これは市場が恐慌状態に陥り株価が暴落している時こそ、良質な企業の株式を買いこむチャンスだという意味です。実際、リーマンショック直後の2008年10月、バフェットは「今こそアメリカ株を買うべきだ」と宣言し、自らも米国の主要金融機関への投資を行いました。その後、景気回復に伴って株式市場は大幅に反発し、長期保有した投資家は大きな利益を得ました。
ただし、バブル崩壊期の株式投資には注意が必要です。まず、バブルを牽引していた余りに過熱した業界(例えばITバブル崩壊時のIT関連株や、リーマンショック時の金融株など)は崩壊後も業績悪化が続き、株価が回復しない場合があります。そのため、投資先の選定が重要です。具体的には財務基盤が堅実で収益力の高い企業、景気後退でも収益が落ちにくいディフェンシブ(防衛的)産業の企業、インフレ時でも価格転嫁が可能な強い競争力を持つ企業などに注目すると良いでしょう。例えば食品や日用品など生活必需品を扱う企業や、電力・通信などインフラ産業の企業は、景気変動の影響を受けにくく、インフレ時でも需要が維持されやすい傾向があります。
また、株式投資には長期視点が不可欠です。バブル崩壊直後は株価が下落し続けるかもしれませんが、その後の景気回復局面で株式は他の資産に比べて高いリターンを生む可能性があります。バフェットも「喜んで10年間保有できない株は10分間も保有すべきでない」と述べており、短期的な株価変動に左右されず長期にわたって優良企業を保有する姿勢が成功の鍵となります。もちろん、株式はリスクの高い資産であることを忘れてはなりません。分散投資や割安感のある価格での買い付け、適切なリスク許容度の範囲での投資が大切です。
5. 債券(安全資産としての国債)
債券、特に信用力の高い国債は、バブル崩壊時の安全資産として価値が上がる傾向があります。バブル崩壊によって経済が後退すると、中央銀行は金融緩和(金利引下げ)を行うことが多く、既存の債券の金利(利回り)は市場金利より高くなるため価格が上昇します。また投資家がリスク資産から安全資産へ資金を移す動きが強まるため、国債への需要が増えて価格が上がります。
例えばリーマンショック時には、米国債や日本国債など主要国債券の価格が上昇し、金利は低下しました。米国債10年物の利回りは2007年には約4.5%でしたが、2008年末には2%前後まで急落しました。これは巨額の資金が国債に流入した結果です。日本でも円高・低金利の進行で国債金利が低下し、債券投資家は資本利得(値上がり益)を得ることができました。
債券はインフレ時には不利になることが多いですが、バブル崩壊直後はデフレ圧力が強まるため、一時的に債券は好環境となります。その後インフレが発生する可能性もありますが、インフレ連動型債券(TIPSなど)のように物価上昇率に連動して元本や利息が調整される商品もあります。また、債券は株式との相関関係が低いため、ポートフォリオに組み入れることでリスク分散効果が期待できます。バブル崩壊時に株式が暴落しても、債券は上昇する場合があり、全体の損失を抑える役割を果たします。
ただし債券投資にも注意点はあります。信用力の低い社債や新興国企債はバブル崩壊時に倒産リスクや為替リスクが高まり、むしろ価格が下落する可能性があります。安全資産として機能させるには、先進国の国債や信用格付が高い社債に絞ることが望ましいでしょう。また金利が底割れしている状況では、将来的な金利上昇による資本損失リスク(債券価格下落リスク)も考慮する必要があります。適切な残存期間の選択や分散投資によって、債券のメリットを活かしつつリスクを管理することが重要です。
6. コモディティ(原油・農産物など)
コモディティとは原油や天然ガス、金・銀などの貴金属、銅・鉄などの工業金属、小麦・トウモロコシなどの農産物といった、原材料や一次産品の総称です。これらコモディティの価格はバブル崩壊時には一概に上がるわけではありませんが、状況によっては価値が上昇するケースがあります。
例えば、バブル崩壊がインフレ圏で起きた場合(資源価格高騰局面での崩壊)、崩壊直後は需要減でコモディティ価格が下落しますが、その後各国が景気刺激策を打ち出してインフレが再燃すると、コモディティ価格は上昇に転じることがあります。実際、リーマンショック直前の2008年7月には原油価格が1バレル=147ドルと史上最高値を付けましたが、崩壊後に急落しました。しかし2009年以降、各国の金融緩和によって流動性が潤沢になると原油価格は再び上昇し、2011年には1バレル=100ドルを超える水準まで戻りました。
また、コモディティの中でも金や銀などの貴金属は前述の通りセーフヘブン資産として機能し、バブル崩壊時に買われる傾向があります。農産物や工業金属も、中長期的には人口増加や新興国の成長による需要増加が見込まれるため、景気後退局面を乗り越えれば価格上昇が期待できます。さらにコモディティは紙の資産との相関が低く、ポートフォリオに組み入れることで分散効果が得られます。
コモディティへの投資方法としては、先物取引やETF(上場投資信託)を利用する方法が一般的です。例えば原油ETFやコモディティ総合指数ファンドなどを購入することで、少額からコモディティ市場に投資できます。ただしコモディティ価格は天候や地政学リスクなど影響要因が多岐にわたり、変動が激しいためリスク管理が重要です。バブル崩壊期にコモディティに投資する場合も、他の資産とのバランスを取り、長期的視点で見ることが大切でしょう。
7. 外貨建て資産(ドル建て資産など)
外貨建て資産とは、日本円以外の通貨建てで保有する資産のことです。例えばドル建ての投資信託や外貨建て国債、外貨建て預金などが該当します。バブル崩壊時に外貨建て資産が価値を上げるケースとしては、為替レートの変動によるものが挙げられます。
リスク回避局面では前述の通り円高・ドル安が進行することがありますが、その一方で、自国通貨が急落するような金融危機(例えば新興国の通貨危機)では、自国通貨よりも信用力の高い外貨(ドルやユーロなど)建て資産に資金が逃げ込みます。例えばアジア通貨危機(1997年)ではタイ・バーツやインドネシア・ルピアなど新興国通貨が急落し、その国の富裕層は資産をドル建てに切り替えて価値を守りました。日本の場合、自国通貨(円)がセーフヘブンとなることが多いため、リーマンショック時にはドル建て資産より円建て資産が相対的に価値を高めました。しかし、日本でも何らかの形で円安・インフレが進行する局面が来れば、ドルやユーロ建ての資産を保有しておくことで資産価値を守る効果があります。
外貨建て資産への投資は、為替変動リスクを伴います。円高が進めばドル建て資産の円換算価値は下落しますし、逆に円安が進めば上昇します。そのため、単純に為替投機をするのではなく、長期的に自国通貨の信用力低下リスクをヘッジ(回避)する観点で保有することが重要です。例えば、資産の一部をドル建ての米国債や米国株式ファンドに振り向けておけば、万一円安・インフレが発生してもその損失を外貨建て資産の評価益で相殺できる可能性があります。
外貨建て資産の具体例としては、外貨建て国債(米国債やドイツ国債など)、外貨建て投資信託(海外株式や債券を運用するファンド)、外貨預金(ドル預金など)があります。また近年は外貨建ての不動産投資(海外不動産への投資)も可能です。ただし海外投資には各国の経済状況や為替リスク、税金の問題などもあるため、十分な調査と分散投資を行うことが望ましいでしょう。
8. その他の資産(REITsや貴金属、外貨預金など)
最後に、上記以外にもバブル崩壊時に価値を維持・上昇しやすい資産がいくつかあります。それらも含めて簡単に紹介します。
- REITs(不動産投資信託): 不動産投資信託は、不動産を組み入れた投資ファンドです。直接不動産を購入できない人でも、REITsに投資することで不動産の運用益を享受できます。バブル崩壊時にはREITsの価格も下落する可能性がありますが、優良な物件を抱え収益性の高いREITsは、家賃収入による分配金(利回り)が安定しているため長期的に価値を回復するでしょう。不動産そのものと同様、インフレ時には物件価格上昇の恩恵も期待できます。
- 貴金属(銀・プラチナなど): 金以外の貴金属も有事の資産として注目されます。特に銀は工業用途もあり需要がある上、金に比べ安価なため個人投資家にも手が届きます。バブル崩壊時には金同様に銀の価格も上昇することがあります。ただし銀は金より変動が激しいためリスクも高い点に注意が必要です。
- 外貨預金: ドルやユーロなどの外貨で預金をしておくことも、資産防衛策の一つです。外貨預金は金利が低い場合が多いですが、為替差益の可能性があります。例えば円安が進めばドル預金の円換算価値が上がります。ただし外貨預金単体ではインフレに弱いため、他の資産と組み合わせてヘッジ目的で使うのが望ましいでしょう。
- 現金・流動性資産: 極端な表現をすれば、バブル崩壊時には「現金は王様(Cash is King)」と言われます。市場が暴落する局面では、現金を持っていれば割安な資産を買い込むチャンスを捉えることができます。現金自体は価値が上がるわけではありませんが、他の資産が暴落した時に購買力が相対的に高まるという意味で重要です。バブル崩壊前に適切な現金準備をしておき、暴落局面で良質な資産を買い増す戦略は、長期的な資産増加につながる可能性があります。
以上のように、バブル崩壊時に価値が上がる資産は様々な種類があります。それぞれにリスクとメリットがあるため、自らの投資目的やリスク許容度に合わせて組み合わせることが大切です。次章では、バブル崩壊時に価値が下がる資産の例について触れ、対比して理解を深めます。
バブル崩壊時に価値が下がる資産の例
バブル崩壊時には多くの資産の価値が下落しますが、特にその打撃を受けやすい資産もあります。バブル崩壊時に価値が下がる資産の代表例をいくつか挙げます。
- バブルの中心だった資産: バブルを牽引していた資産クラスは、崩壊時に最も大きな打撃を受けます。例えば1980年代末の日本では不動産と株式がバブルの中心でしたが、バブル崩壊後は地価・株価が長期間下落し続けました。2000年のITバブル崩壊ではIT関連株が急落し、多くの企業が倒産して株価がゼロになりました。またリーマンショックでは住宅ローン担保証券(MBS)やそれを組み込んだ金融商品が価値を急落させ、発行元の金融機関も破綻しました。つまり、バブル期に過熱していた資産ほど、崩壊時には激しい調整を余儀なくされる傾向があります。
- 高レバレッジ(借入)を使った投資資産: バブル期には信用膨張によって借入を使った投資が盛んになります。しかし崩壊時に価格が下落すると、借入分を返済するために投げ売りが発生し、さらなる下落を招く悪循環が起きます。例えば不動産バブル崩壊時には、ローン買いで複数の物件を持っていた投資家が相次いで物件を売却し、供給過多で不動産価格が暴落しました。また、レバレッジをかけたヘッジファンドなどが損失を被り、持ち株を投げ売りすることで株式市場の下落を加速させた例もあります。高レバレッジは利益を増幅させますが、損失も増幅させるため、バブル崩壊時には資産価値を急激に低下させる要因となります。
- 信用リスクの高い債券や金融商品: バブル期には低金利の中で利回りを求める投資家が増え、高金利だが信用力の低い債券(いわゆるジェンク債)や複雑な金融商品に資金を振り向けます。しかし崩壊時には発行企業の業績悪化や倒産が相次ぎ、これら債券の価格は急落します。また、銀行発行の優先株やココ債(強制転換社債)なども、金融機関の経営悪化で価値が著しく低下するケースがあります。バブル崩壊時には安全資産への逃避が起きるため、信用リスクの高い資産は敬遠され価値が下がります。
- 新興国通貨や新興国資産: グローバルなバブル崩壊が起きると、世界的なリスク回避の流れの中で新興国通貨が急落し、新興国の株式・債券市場も資金流出で下落します。リーマンショック時にも、インドネシアやブラジルなど新興国の通貨が大きく下落し、株式市場も急落しました。これは先進国投資家がリスク資産を売却して本国通貨に資金を引き揚げたためです。新興国資産は成長性こそ高いものの、グローバルな危機時には先進国資産より打撃を受けやすい傾向があります。
- 非流動性の高い資産: バブル崩壊時には市場全体の流動性が低下します。そのため、売買が不活発な非流動性の高い資産(例えばアンティークや芸術品、一部の不動産など)は買い手がいなくなり、売却するには大幅な値下げを余儀なくされることがあります。バブル期に高値が付いていたアンティークも、崩壊時には資金繰りのため投げ売りされ価格が暴落する例があります。流動性の低い資産はバブル崩壊時に「値がつかない」恐れがあるため注意が必要です。
以上のように、バブル崩壊時には様々な資産が価値を失います。したがって、バブル崩壊への備えとしては、こうしたリスクの高い資産への過度な集中を避け、逆に前章で述べた価値が上がりやすい資産に適度に分散することが重要です。次章では、バブル崩壊時にも価値を維持・向上させるための資産選びのポイントや戦略について解説します。
インフレ対策になる資産の選び方と戦略
バブル崩壊後には、景気刺激策によってインフレ(物価上昇)が発生する可能性があります。インフレが進めば現金や預金などの購買力は低下し、資産価値が目減りします。そのため、バブル崩壊時だけでなくその後のインフレ局面に備えて、インフレ対策になる資産を選ぶことが大切です。インフレ対策資産の選び方と戦略をいくつかポイントで紹介します。
- 実物資産へのシフト: インフレでは「お金よりモノ」に価値が移ります。そのため、土地・建物などの不動産や、金・貴金属、コモディティなど実物資産への投資が有効です。これら実物資産はインフレ時に価格が上昇する傾向があり、資産価値を維持できます。例えば不動産はインフレによって物件価格や家賃が上がるため、現金を預けておくより資産価値が高まりやすいです。また金はインフレ時にも価格が上がる傾向があり、有事の資産としても機能します。
- インフレ連動型商品の活用: インフレに連動して価値が調整される金融商品も活用できます。例えばインフレ連動国債(TIPSなど)は物価上昇率に応じて元本が調整されるため、インフレ下でも実質的な利回りを確保できます。また、インフレ対策型の投資信託やETFも存在します。例えば金ETFや不動産ETF、コモディティETFなどを組み合わせたファンドは、インフレ時に価値が上がりやすい資産に投資しているため、ヘッジ効果が期待できます。
- 収益性の高い資産への投資: インフレ下では金利も上昇する傾向がありますが、それでも現金や預金の利回りは物価上昇率を下回る場合が多いです。そのため、インフレ率を上回るリターンを狙える資産に投資することが重要です。代表的なのが株式です。企業はインフレ時にも製品価格を引き上げて収益を伸ばせる場合があり、株価も上昇する可能性があります。実際、株式の価格はインフレが起きると上昇する傾向があるため、資産全体の価値維持・増加に寄与します。ただし株式はリスクが高いため、債券や不動産とのバランスを取る必要があります。
- 分散投資とポートフォリオの最適化: インフレ対策には単一の資産に頼るのではなく、複数の資産を組み合わせた分散投資が有効です。例えば「株式+不動産+金+債券」といったポートフォリオにすることで、どのような経済環境下でも一部の資産が価値を上げてくれる可能性があります。インフレが低い時期には債券や現金が有利でも、インフレが高まれば不動産やコモディティが有利に働きます。常にすべての資産が好調になるわけではありませんが、分散投資によってリスクを分散し、長期的に資産価値を安定的に伸ばすことができます。
- 長期視点と柔軟な運用: インフレ対策資産の選定にあたっては、長期的な視点で見ることが大切です。短期的な物価変動に振り回されて頻繁に資産を入れ替えるのではなく、中長期的にインフレに強い資産を主体に据え置きつつ、状況に応じてポートフォリオを調整する柔軟性も必要です。例えばインフレ率が上昇し始めたら債券の比率を減らして不動産やコモディティの比率を増やす、といった調整が考えられます。また、自分の生活設計や資金需要に合わせて、必要な流動性を確保しつつインフレ対策資産に投資することも重要です。
以上のような戦略を踏まえ、バブル崩壊時からインフレ局面に至るまで資産価値を守り抜くことができるでしょう。次章では、実際に1000万円の資金がある場合に、どのようにバブル崩壊時に価値が上がる資産を選び運用すればよいか、シミュレーション結果を交えて考えてみます。
1000万円でバブル崩壊時に価値が上がる資産を選ぶ際のシミュレーション結果
ここでは、資金1000万円を使ってバブル崩壊時に価値が上がりやすい資産に投資する場合のシミュレーション結果を紹介します。シミュレーションでは、代表的な資産クラスごとに20年後の資産価値を試算しました。前提条件として、それぞれの資産クラスの年平均リターン(利回り)を過去の実績や予測値に基づいて設定し、年間複利計算で20年後の価値を求めました。なお、このシミュレーションはあくまで想定であり、実際の市場動向によって結果は大きく異なる点に注意してください。
上のグラフが示すように、現金・預金は年利0.1%程度の低金利では20年後も1020万円程度にとどまります。一方、日本国債(年利1%程度)では1220万円程度に増えますが、インフレを考慮すると実質的な増加はわずかです。
これに対し、株式は高い成長性を示します。米国株式は年平均8%のリターンを想定すると、20年後に約4661万円に膨らみ、約3661万円の利益を生みます。日本株式も年平均6.5%で約3524万円、新興国株式は年平均9%で約5604万円に達します。
不動産投資は年平均7.5%を想定すると約4248万円と、安定した成長が見込まれます。金(ゴールド)は年平均5.5%で約2918万円、コモディティは年平均6%で約3207万円と、中程度のリターンを示します。外貨建て資産は年平均7%を想定すると約3870万円と、為替差益も含めた成長が期待できます。
このシミュレーションから得られる教訓は、長期的に見て株式や不動産といったリスク資産への投資が資産増加に最も寄与し得るという点です。一方で、現金や低利回りの債券に資金を置いておくだけでは、インフレによる目減りを免れず資産拡大は困難です。バブル崩壊時には一時的に株式などの価格が下落するかもしれませんが、長期的には優良な資産に投資することで大きな成長が期待できます。
ただし、高いリターンを伴う資産ほど変動リスクも大きいため、自らのリスク許容度に合わせたポートフォリオ構築が重要です。例えば1000万円を全額株式に投資すればリターンは最大になりますが、バブル崩壊時の暴落局面で精神的負担が大きくなります。そこで、資産の一部を不動産や金、債券など相対的に安定した資産に振り向けることで、ポートフォリオ全体の変動を抑えつつ長期的な成長を図る戦略が現実的です。
実際には市場環境や経済状況は予測不能な部分も多く、過去の実績が未来を保証するものではありません。したがって、シミュレーション結果は参考情報と捉え、定期的にポートフォリオをチェックして必要に応じてリバランス(再調整)を行うことが大切です。次章では、著名投資家であるウォーレン・バフェットの名言や戦略を参考に、バブル崩壊局面での資産運用のポイントを整理します。
バフェットの名言に学ぶ資産運用戦略
ウォーレン・バフェットは「投資の神様」と称される世界有数の投資家であり、彼の数々の名言はバブル崩壊時の資産運用にも示唆を与えてくれます。ここではバフェットの代表的な言葉をいくつか紹介し、そこから学べる戦略について解説します。
- 「他人が恐怖に駆られる時こそ貪欲になれ。他人が貪欲になる時こそ恐怖すべきだ」 – この名言はバフェットの投資哲学を端的に表しています。バブル崩壊時には市場全体が恐怖に支配され、多くの投資家が資産を売り払って現金化します。しかしバフェットはそのような時こそ割安な優良資産を買いこむチャンスだと考えています。逆に、市場が過熱して誰もが株を買い狂うバブル期には慎重さを強調しています。この教えから学べるのは、群集心理に振り回されず逆張りの精神を持つことです。バブル崩壊時の恐慌に乗っ取られず、冷静に優良資産の価値を見極めて投資することが長期的成功の鍵となります。
- 「ルール1:絶対に損をしないこと。ルール2:ルール1を決して忘れないこと」 – この言葉はバフェットの投資における損失回避の重要性を示しています。バブル崩壊時に資産価値が急落する中でも、まずは元本を守ることが最優先であるという姿勢です。具体的には、過度なリスクテイク(例えば全資産を単一の投機的資産に賭けることや、借入を使った投資など)を避け、財務の健全な企業や安全資産に投資することで損失を抑えます。バフェットは「信用を築くには20年かかるが、それを失うのに5分で足りる」とも述べており、慎重さと誠実さが投資においても大切だと示唆しています。バブル崩壊時には損失を出さない(あるいは最小限に抑える)ことが、その後の回復に向けた土台となります。
- 「価格はあなたが払うもの。価値はあなたが得るものだ」 – この言葉はバブル崩壊時の投資判断にも応用できます。バブル崩壊で株価や資産価格が暴落したとき、それは必ずしもその資産の「本質的価値」が下がったわけではありません。市場の過剰反応で価格が一時的に価値を下回っている可能性があるのです。バフェットはこの差(価格と価値の差)を見極めて投資するバリュー投資を信奉しています。バブル崩壊期には多くの資産が割安になっていますが、その中から本質的価値が高く一時的な下落に過ぎない資産を見つけることが重要です。例えば優良企業の株式は業績自体は堅調なのに株価だけが暴落することがあります。このような場合、その企業の将来的な収益力など本質的価値を評価し、割安感があれば果敢に投資するという戦略です。「価格を追わず価値に注目する」ことが、バブル崩壊時の的確な投資判断につながります。
- 「10年間株を持ち続ける気がないなら、たった10分間でも持とうな」 – バフェットは長期投資の大切さをしばしば強調しています。バブル崩壊時に優良資産を買い込んだ場合、短期的にさらに下落する可能性もあります。しかし優良な資産は長期的に価値を高めると信じ、揺るぎない信念で保有することが重要です。この名言から学べるのは、長期視点で投資することです。バブル崩壊という短期的な混乱に振り回されず、数年~数十年先を見据えて資産を選び続ける姿勢です。バフェット自身、コカ・コーラやアップルといった優良企業の株式を何十年も保有し続けてきました。その結果、短期的な市場変動を乗り越えて莫大な利益を上げています。バブル崩壊時に買い込んだ資産も、長期にわたってしっかり保有することで、景気回復に伴う大きなリターンを得ることができるでしょう。
- 「自分の知識の輪を広げるより、その輪の境界を明確にする方が重要だ」 – この言葉は、投資における自己認識と専門領域の明確化の重要性を示しています。バブル崩壊時には様々な情報や噂が飛び交い、人に勧められた資産に飛びつきたくなる誘惑もあります。しかしバフェットは「自分が理解できないビジネスには投資しない」としており、自らの知識と経験の範囲内で投資判断を行ってきました。バブル崩壊期にも、自分の理解できる資産に絞って投資することが肝要です。例えば複雑な金融商品や新興国のマーケットなど、自らの知識では価値を判断できないものに無謀に投資するのは危険です。逆に、自分がよく知っている業界や企業、あるいは実物資産(不動産や金など)に投資すれば、状況変化に応じて適切に判断できるでしょう。「知らないことには手を出さない」という原則を守ることで、バブル崩壊時のトラブルを回避できます。
以上、バフェットの名言から学べる資産運用戦略をまとめました。一言で言えば、「バブル崩壊時には冷静さと洞察力を持ち、優良資産を大胆に買い込み、長期にわたってしっかり保有する」ことが重要だということです。バフェット自身がリーマンショック時にも多額の資金を投じて優良企業を支援し、その後の景気回復で大きな成功を収めました。一般投資家でも、こうした知恵に学びつつ自らの投資スタイルを磨いていくことが、バブル崩壊という試練を乗り越え資産を増やす鍵となるでしょう。
おわりに
リーマンショック級のバブル崩壊が起きた際にも価値が上がる資産について、詳細に解説してきました。バブル崩壊時には多くの資産が暴落しますが、不動産や金、主要通貨、国債など現物資産や安全資産は相対的に価値を維持しやすく、場合によっては価格が上昇することがあります。また、株式でも質の高い企業を選び逆張りで投資すれば、長期的に大きなリターンを得られる可能性があります。インフレ対策にもなる資産を選ぶことで、バブル崩壊後のインフレ局面でも資産価値を守ることができます。
重要なのは、分散投資と長期視点です。単一の資産に過度に集中するのではなく、複数の資産に分散することでリスクを低減できます。また、短期的な暴落に振り回されず長期的な視野で資産運用を行うことで、市場の波を乗り越えて資産を成長させることができます。著名投資家の言葉に学び、冷静さと判断力を持ってバブル崩壊という試練に臨むことが大切です。
最後に、資産運用には常にリスクが伴います。過去の実績が未来を保証するものではなく、市場環境は予測不能な変化を遂げます。したがって、本記事の内容はあくまで参考情報としてご活用いただき、自らの投資目的やリスク許容度に合わせて慎重に判断することをお勧めします。バブル崩壊という厳しい局面でも、適切な資産選択と戦略を持つことで資産価値を守り、その後の回復局面で資産を増やすチャンスを掴めるでしょう。皆様の資産運用の参考になれば幸いです。
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